2013年 10月 23日
スピリチュアルケアの勉強室 #20 2013年10月 |
スピリチュアリティとスピリチュアルケア
「スピリチュアリティ」ということばは、1960年代頃までキリスト教世界、特にカトリックで使われていた用語でした。その内容は個人や修道会の信仰において畏怖を感じさせる対象であり、神秘的で秘伝的(mystic)な面を表現しました。フランシスコ会(貧困と共同生活)やイエズス会(従順)における「スピリチュアリティ、霊性」がよく知られています。それはキリストに従うことの内面性を意味しました。この内面性に対して世界に対する責任のあり方、信仰の伝統的な事柄(例:儀式)に対して新しい信仰体験(例:Martin Luther King Jr.の非暴力運動)という立場、伝統的な信仰理解(例:原理主義)に対してと近代的な human science の立場(例:原典批判)、というような相対する理念をも超えて、スピリチュアリティは人類の知恵wisdomと統合しようとする内面的な動きをも意味すると考えられます。
健康管理や衛生、医学や看護学などの発展は、スピリチュアリティが特にアングロサクソン社会における世界観および文化的な背景からも、宗教世界を超えた概念として発達していきました。このspiritual turn」は、しばしば宗教的な理解に対して反体制的、反教会的な色彩が濃かったため、キリスト教会側の批判的な態度を招きました。それに対して高名な神学者たちは人間学的に、さらに宗派を超えたスピリチュアリティの意味を追及しました。
従ってスピリチュアルケアは病者の内面的(スピリチュアル)なニーズに対するケアであり、危機的状況、人生観などに対する介護、看護、精神(心理)療法、社会福祉、医療や、その他の健康管理に関する専門職と協働することを意味しています。またスピリチュアルケアは臨床パストラルケアにおける長年の経験を利用しながらこれらの医療チームに統合させていくことができます。その上スピリチュアルケアは各専門職や各宗教派の領域を超えた領域でもあります。
スピリチュアルの概念が日本に初めて紹介されたのはWHOによるものだと思われます。「がんの痛みからの解放とパリアティブ・ケア」は1990年にWHOから発行され、日本版は1993年に出版されました。その中で「多くの患者の苦痛は身体的な問題に限られているわけではなく、身体的な痛みの治療はいくつもの苦しい症状の一つに対する治療であり、身体面、心理面、社会面、霊的な(spiritual)面のすべての面に対応する包括的な医療の一部を構成しているにすぎない」と述べています。現在、ホスピスや緩和ケア病棟の増加によって「スピリチュアル」の概念は広がりましたが、「スピリチュアル」への理解は乏しく、「スピリチュアル」と「心理」があたかも同じ概念であるかのように捉えられてしまう場合も良く見られます。
「スピリチュアル」を理解するには「スピリチュアリティ」の把握が優先課題になります。「日本の心」という場合の「心の底」は「スピリチュアリティ」の意味により近い適切な表現に思われます。年齢を重ねた私にとって今、スピリチュアリティを定義すれば「責任をもって自分自身の核を生きること」であり「責任をもって自分自身の核から生きること」です。*1
-------------------------
1: W・キッペス 「スピリチュアルな痛み」サンパウロ 2011年12月30日 25頁
Praktisches Lexikon der SpiritualitätHerder 1988 750頁
「スピリチュアリティ」ということばは、1960年代頃までキリスト教世界、特にカトリックで使われていた用語でした。その内容は個人や修道会の信仰において畏怖を感じさせる対象であり、神秘的で秘伝的(mystic)な面を表現しました。フランシスコ会(貧困と共同生活)やイエズス会(従順)における「スピリチュアリティ、霊性」がよく知られています。それはキリストに従うことの内面性を意味しました。この内面性に対して世界に対する責任のあり方、信仰の伝統的な事柄(例:儀式)に対して新しい信仰体験(例:Martin Luther King Jr.の非暴力運動)という立場、伝統的な信仰理解(例:原理主義)に対してと近代的な human science の立場(例:原典批判)、というような相対する理念をも超えて、スピリチュアリティは人類の知恵wisdomと統合しようとする内面的な動きをも意味すると考えられます。
健康管理や衛生、医学や看護学などの発展は、スピリチュアリティが特にアングロサクソン社会における世界観および文化的な背景からも、宗教世界を超えた概念として発達していきました。このspiritual turn」は、しばしば宗教的な理解に対して反体制的、反教会的な色彩が濃かったため、キリスト教会側の批判的な態度を招きました。それに対して高名な神学者たちは人間学的に、さらに宗派を超えたスピリチュアリティの意味を追及しました。
従ってスピリチュアルケアは病者の内面的(スピリチュアル)なニーズに対するケアであり、危機的状況、人生観などに対する介護、看護、精神(心理)療法、社会福祉、医療や、その他の健康管理に関する専門職と協働することを意味しています。またスピリチュアルケアは臨床パストラルケアにおける長年の経験を利用しながらこれらの医療チームに統合させていくことができます。その上スピリチュアルケアは各専門職や各宗教派の領域を超えた領域でもあります。
スピリチュアルの概念が日本に初めて紹介されたのはWHOによるものだと思われます。「がんの痛みからの解放とパリアティブ・ケア」は1990年にWHOから発行され、日本版は1993年に出版されました。その中で「多くの患者の苦痛は身体的な問題に限られているわけではなく、身体的な痛みの治療はいくつもの苦しい症状の一つに対する治療であり、身体面、心理面、社会面、霊的な(spiritual)面のすべての面に対応する包括的な医療の一部を構成しているにすぎない」と述べています。現在、ホスピスや緩和ケア病棟の増加によって「スピリチュアル」の概念は広がりましたが、「スピリチュアル」への理解は乏しく、「スピリチュアル」と「心理」があたかも同じ概念であるかのように捉えられてしまう場合も良く見られます。
「スピリチュアル」を理解するには「スピリチュアリティ」の把握が優先課題になります。「日本の心」という場合の「心の底」は「スピリチュアリティ」の意味により近い適切な表現に思われます。年齢を重ねた私にとって今、スピリチュアリティを定義すれば「責任をもって自分自身の核を生きること」であり「責任をもって自分自身の核から生きること」です。*1
-------------------------
1: W・キッペス 「スピリチュアルな痛み」サンパウロ 2011年12月30日 25頁
Praktisches Lexikon der SpiritualitätHerder 1988 750頁
by pastoralcare-jp
| 2013-10-23 11:21
| 勉強室